出版社であるPLOS社はOpen Scienceを促進させるため、古くから有効な施策を講じています。2014年からはデータ共有化の投稿規定 (Data Availability Policy) を定めており、査読者や論文の読者に対して重要なデータを開示するよう求めてきました。2020年の2月26日に公開されたPLOS ONEのブログ記事によると、オープンサイエンスを加速するため、新しいジャーナルデータポリシーに準拠することが示されています。
研究公正化の文脈では、PLOS ONEおよびPLOS Biologyは2019年7月に投稿規定を変更し、重要な規程を定めました。電気泳動画像 (ゲル画像) に対して、原画像の提出を義務付けたのです。研究者が上記のジャーナルにゲル画像を含む論文を提出する場合、投稿時に原画像をアップロードしなくてはなりません。PLOS Biology誌の場合は論文受理の決断前に、PLOS ONE誌の場合はレビューの段階で、原画像を検査されることになります。これついてPLOS ONE誌は自身のブログ記事にて「意図しない不正画像を、出版前に排除するため」としています。
ライフイエンス系の学術論文の場合、出版後の論文に対する不正画像の頻度はおよそ4%程度だと報告されています。しかし、実は出版前、つまり投稿時に含まれれる不正画像の頻度は極めて高く、20%以上にものぼるとの報告もあります。そのため、論文出版社ではData Integrity Analystと呼ばれるスタッフが、投稿論文に含まれる画像やデータを精査しているのです。PLOS ONEおよびPLOS Biologyの場合、提出された原画像はエディターおよび査読者にも検査されるとしています。
現在、原画像の提出を推奨している出版社はあるものの、義務付けている出版社はPLOS社にありません。しかし、Open Scienceの拡大と併せてデータへのアクセスが求められていくなかで、各出版社にとっては大きく意義のある前例となったのではないでしょうか。